絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「ありがたいお申し出ですが、私はもう結婚した身ですのでお断りさせてください。それに今はなによりも『シドニア花祭り』に注力したいんです」
やんわりと首を振ると、カールが信じられないといわんばかりに目を見開いた。
「は!? 王太子妃つきの女官を蹴って、あんな平民出身の野獣に仕えると言うのか? しかも祭りだって!? 噂では聞いていたが、野蛮なケダモノくせに、今更人間様の人気とりをしようとでも言うのか。バカバカしい!」
「――ッ」
カールの罵詈雑言に一瞬、瞼の裏がカッと赤く染まった気がしたが、なんとか飲み込んだ。
そうだ。ここで頭に血を登らせては元も子もない。
テーブルの下できつく拳をにぎり、唇を震わせながらも従兄を静かに見つめる。
「カール、どうぞ夫を誤解なさらないで。マティアス様はとても心優しく、真摯で真面目な方です。私は夫を心から尊敬して……王都ではなくシドニアで暮らし、あの地で暮らす領主の妻として生きていきたいのです。そして領民のためにも『シドニア花祭り』を成功させたいと思っています。申し訳ありません」
穏やかな口調ではあるが一歩も引かない。
そんなフランチェスカの意志を感じ取ったのだろう。
カールは激しい音を立ててテーブルを拳で叩く。
「ジョエル!」
だがジョエルも引かなかった。それまで無言で話を聞いていたジョエルは、
「僕も妹と同じ気持ちです。そうでなければ最愛の妹を嫁がせようなんて思わない」
とさらりと答える。
兄と妹の抵抗を受けて、カールは苛立ったように椅子から立ち上がった。
「お前たちがここまで愚かだとは思わなかった! それでも王家につらなる家の子か! この恩知らずの無礼者が! 絶対に後悔することになるからな! 覚えておけ!」
完璧な捨て台詞とともに、勢いよく応接室を出ていってしまった。
「――お兄様、ごめんなさい」
応接室から重くて苦しい空気が薄れた頃、ため息とともにフランチェスカは詫びの言葉を口にた。
「なにが?」
ジョエルはクスッと笑う。
「……お嫁に行く前だったら、断ってなかったわ」
もちろん自分に務まるのか悩みはするだろう。王太子妃のお気に入りになるはずが、逆に疎まれて、兄や父に迷惑をかけることになる可能性だってある。おいそれとは決断できない。
やんわりと首を振ると、カールが信じられないといわんばかりに目を見開いた。
「は!? 王太子妃つきの女官を蹴って、あんな平民出身の野獣に仕えると言うのか? しかも祭りだって!? 噂では聞いていたが、野蛮なケダモノくせに、今更人間様の人気とりをしようとでも言うのか。バカバカしい!」
「――ッ」
カールの罵詈雑言に一瞬、瞼の裏がカッと赤く染まった気がしたが、なんとか飲み込んだ。
そうだ。ここで頭に血を登らせては元も子もない。
テーブルの下できつく拳をにぎり、唇を震わせながらも従兄を静かに見つめる。
「カール、どうぞ夫を誤解なさらないで。マティアス様はとても心優しく、真摯で真面目な方です。私は夫を心から尊敬して……王都ではなくシドニアで暮らし、あの地で暮らす領主の妻として生きていきたいのです。そして領民のためにも『シドニア花祭り』を成功させたいと思っています。申し訳ありません」
穏やかな口調ではあるが一歩も引かない。
そんなフランチェスカの意志を感じ取ったのだろう。
カールは激しい音を立ててテーブルを拳で叩く。
「ジョエル!」
だがジョエルも引かなかった。それまで無言で話を聞いていたジョエルは、
「僕も妹と同じ気持ちです。そうでなければ最愛の妹を嫁がせようなんて思わない」
とさらりと答える。
兄と妹の抵抗を受けて、カールは苛立ったように椅子から立ち上がった。
「お前たちがここまで愚かだとは思わなかった! それでも王家につらなる家の子か! この恩知らずの無礼者が! 絶対に後悔することになるからな! 覚えておけ!」
完璧な捨て台詞とともに、勢いよく応接室を出ていってしまった。
「――お兄様、ごめんなさい」
応接室から重くて苦しい空気が薄れた頃、ため息とともにフランチェスカは詫びの言葉を口にた。
「なにが?」
ジョエルはクスッと笑う。
「……お嫁に行く前だったら、断ってなかったわ」
もちろん自分に務まるのか悩みはするだろう。王太子妃のお気に入りになるはずが、逆に疎まれて、兄や父に迷惑をかけることになる可能性だってある。おいそれとは決断できない。