絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
 ――それから二週間後。
『シドニア花祭り』の大成功を受けて、最終日に挨拶に立ったマティアスは領民の前で来年の祭りの開催を高らかに宣言した。
 王都からの客も押しよせたのもあるが、祭りの最終日ではなんと王太子夫婦が舞台を観劇し、新聞に載るほどの話題になったのだ。

 特にマリカはシドニアを気に入ってくれたようで、
『フランチェスカともお友達になれたし、たくさん遊びに来たいわ』
 と、真剣な顔で何度も口にしていた。

 王太子夫婦が遊びに来るとなれば、シドニアはもう辺境の田舎ではなく、れっきとした避暑地だ。
 当然、王太子夫婦のための別荘も建築予定に組み込まれた。

「これはもう鉄道会社と手を組むしかありません! そうだ、いっそ駅を作りませんか! 日帰り客もたくさん呼べるようになる!」
 ダニエルが言い出し、皆で盛り上がった。

 夢物語のような話ではあるが、シドニア領に鉄道の駅ができれば、王都との行き来はかなり楽になるし、街の発展にもつながる。
 シドニアがかつての賑わいを取り戻すのも、そう遠くないかもしれない。



 応接室で手紙を読み終えたマティアスは、大きくため息をついて頬杖をついた。

「マティアス様、父からの手紙にはなんと?」
「火災被害についての復興費用は公爵家が全額負担の上、カール・グラフ・ケッペル侯爵は自主的に爵位を返上することになったらしい。そして母方の領地である西方へと向かうと」

 彼の後ろの窓からは、初夏のさわやかな空が広がって見える。満開のスピカのグラデーションが空に繋がって美しい。

「西方……二度と王都の地は踏めないでしょうね」
「そうなのか?」
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