絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
かわいらしい小鳥の泣き声と瞼の上をなぞる太陽の光に、フランチェスカは朝の気配を感じ取って目を覚ました。
(アンナが起こしに来るよりも早く目が覚めちゃった……)
そんなことを考えながらベッドの中で寝返りを打つ。
だがぼんやりとした視界に、長椅子に大きな男が腕を組んで横になっているのが目に入って、息が止まりそうになった。
「っ……!?」
発作的にビクッとベッドの中で体を震わせたが、寝椅子で眠っている男が夫であるマティアスなことに気が付いて、今度は全身からさーっと血の気が引いてゆく。
(えっ、どういうこと!?)
毛布にくるまったまま必死で考えて、ようやくピンと来た。昨日フランチェスカは疲れに負けて、夫を出迎える前にそのまま寝てしまったのだ。
「……」
一応自分の体を見るが、夜着に乱れもなければ体のどこかが痛いだとか、そういった違和感もない。
(ふーんなるほど……私は相変わらず乙女ってことね?)
フランチェスカはゆっくりと体を起こし、毛布の上にかけていた毛皮を肩に羽織り、寝椅子で眠るマティアスを見おろした。
彼は大きな体を寝椅子にむりやり押し込んだような体勢で、体の前で腕を組み、眉間のあたりに皺を寄せて眠っている。
(寒くないのかしら……)
暖炉はすでに消えている。
軍服を着ていた時にも思ったが、上下別の薄い夜着に身を包んだマティアスの体は、なおたくましかった。組んだ腕は太く筋肉が盛り上がっている。伏せたまつ毛は髪と同じ深い赤色で、昔図鑑でみた、南国の鳥を思わせる。
本当に自分とはなにもかもが違う、大人の男の体だった。
そうやってしばらくフランチェスカはマティアスをじろじろ観察していたが、
(なんだかいけないことをしているみたい……)
恥かしいやら照れくさいやらで、次第に見ているのが申し訳なくなってきた。
「あの……」
とりあえずマティアスを起こそうと、おそるおそる手を伸ばした次の瞬間、彼の目がカッと見開かれて手首がつかまれる。そしてフランチェスカの体は宙を浮き、気が付けば寝椅子に押し倒されていた。
(アンナが起こしに来るよりも早く目が覚めちゃった……)
そんなことを考えながらベッドの中で寝返りを打つ。
だがぼんやりとした視界に、長椅子に大きな男が腕を組んで横になっているのが目に入って、息が止まりそうになった。
「っ……!?」
発作的にビクッとベッドの中で体を震わせたが、寝椅子で眠っている男が夫であるマティアスなことに気が付いて、今度は全身からさーっと血の気が引いてゆく。
(えっ、どういうこと!?)
毛布にくるまったまま必死で考えて、ようやくピンと来た。昨日フランチェスカは疲れに負けて、夫を出迎える前にそのまま寝てしまったのだ。
「……」
一応自分の体を見るが、夜着に乱れもなければ体のどこかが痛いだとか、そういった違和感もない。
(ふーんなるほど……私は相変わらず乙女ってことね?)
フランチェスカはゆっくりと体を起こし、毛布の上にかけていた毛皮を肩に羽織り、寝椅子で眠るマティアスを見おろした。
彼は大きな体を寝椅子にむりやり押し込んだような体勢で、体の前で腕を組み、眉間のあたりに皺を寄せて眠っている。
(寒くないのかしら……)
暖炉はすでに消えている。
軍服を着ていた時にも思ったが、上下別の薄い夜着に身を包んだマティアスの体は、なおたくましかった。組んだ腕は太く筋肉が盛り上がっている。伏せたまつ毛は髪と同じ深い赤色で、昔図鑑でみた、南国の鳥を思わせる。
本当に自分とはなにもかもが違う、大人の男の体だった。
そうやってしばらくフランチェスカはマティアスをじろじろ観察していたが、
(なんだかいけないことをしているみたい……)
恥かしいやら照れくさいやらで、次第に見ているのが申し訳なくなってきた。
「あの……」
とりあえずマティアスを起こそうと、おそるおそる手を伸ばした次の瞬間、彼の目がカッと見開かれて手首がつかまれる。そしてフランチェスカの体は宙を浮き、気が付けば寝椅子に押し倒されていた。