絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「きゃあ!」
「わあっ!?」
フランチェスカが悲鳴を上げると同時に、マティアスも驚いたように声をあげた。
そして慌てたように上半身を起こし、フランチェスカに向かって深々と頭を下げる。
「すみません、つい条件反射で!」
「あっ……あ、そうですね、マティアス様は軍人でいらっしゃるから……そっか……はぁ……」
押し倒されたフランチェスカの心臓はバクバクと跳ねていたが、条件反射なら仕方ない。むしろいきなり驚かせてしまった自分が悪い。手のひらで胸のあたりを抑えて呼吸をしていると、マティアスが目を見開く。
「お体は大丈夫ですか?」
「えっ? はい、ちょっとビックリしただけですから」
フランチェスカがこくこくとうなずくと、マティアスはホッとしたように息を吐いた。そして寝椅子の上で居住まいをただすと「おはようございます。熱いお茶でも運ばせましょうか?」と少しだけ微笑んだ。
とにかく体が大きいので黙っていると少し怖そうに見えるが、ふとした瞬間に彼はとても優しい顔になる。
にこりと目を細めると目元に少しだけ笑いじわができて、それがとてもキュートだった。
「はい、でもあの……その前にちょっと……」
お茶は嬉しいが、まず確認しておきたいことがあった。フランチェスカも上半身を起こし、それから思い切ってマティアスを見つめた。
「昨晩は、私たちにはなにもなかった、のですよね?」
するとマティアスはすっと真顔になり、
「――ええ」
と低い声でうなずいた。
いかめしい顔が若干強張っている。
きっとフランチェスカの行いを苦々しく思っているのだ。
「……ごめんなさい、気が付いたら寝てしまっていて」
初夜をこなせなかったなんて大失態だ。申し訳なくなりながらぺこりと頭を下げると、マティアスは驚いたように目を見開き、慌てたように首を振った。
「フランチェスカ様が謝る必要などないのです。結婚の儀式は一日がかりだったし、お疲れになって当然です」
マティアスは本気でそう思っているようだ。
「でも、だからって夫を寝椅子に寝かせてしまうなんて、いけません」
部屋から出ずに寝椅子で夜を明かしたのは、マティアスなりのフランチェスカに対する気遣いなのだろう。だがベッドは、大人が数人が横になってもまったく問題がない広さだ。せめて隣で寝てくれればよかったのにと思わずにはいられない。
「わあっ!?」
フランチェスカが悲鳴を上げると同時に、マティアスも驚いたように声をあげた。
そして慌てたように上半身を起こし、フランチェスカに向かって深々と頭を下げる。
「すみません、つい条件反射で!」
「あっ……あ、そうですね、マティアス様は軍人でいらっしゃるから……そっか……はぁ……」
押し倒されたフランチェスカの心臓はバクバクと跳ねていたが、条件反射なら仕方ない。むしろいきなり驚かせてしまった自分が悪い。手のひらで胸のあたりを抑えて呼吸をしていると、マティアスが目を見開く。
「お体は大丈夫ですか?」
「えっ? はい、ちょっとビックリしただけですから」
フランチェスカがこくこくとうなずくと、マティアスはホッとしたように息を吐いた。そして寝椅子の上で居住まいをただすと「おはようございます。熱いお茶でも運ばせましょうか?」と少しだけ微笑んだ。
とにかく体が大きいので黙っていると少し怖そうに見えるが、ふとした瞬間に彼はとても優しい顔になる。
にこりと目を細めると目元に少しだけ笑いじわができて、それがとてもキュートだった。
「はい、でもあの……その前にちょっと……」
お茶は嬉しいが、まず確認しておきたいことがあった。フランチェスカも上半身を起こし、それから思い切ってマティアスを見つめた。
「昨晩は、私たちにはなにもなかった、のですよね?」
するとマティアスはすっと真顔になり、
「――ええ」
と低い声でうなずいた。
いかめしい顔が若干強張っている。
きっとフランチェスカの行いを苦々しく思っているのだ。
「……ごめんなさい、気が付いたら寝てしまっていて」
初夜をこなせなかったなんて大失態だ。申し訳なくなりながらぺこりと頭を下げると、マティアスは驚いたように目を見開き、慌てたように首を振った。
「フランチェスカ様が謝る必要などないのです。結婚の儀式は一日がかりだったし、お疲れになって当然です」
マティアスは本気でそう思っているようだ。
「でも、だからって夫を寝椅子に寝かせてしまうなんて、いけません」
部屋から出ずに寝椅子で夜を明かしたのは、マティアスなりのフランチェスカに対する気遣いなのだろう。だがベッドは、大人が数人が横になってもまったく問題がない広さだ。せめて隣で寝てくれればよかったのにと思わずにはいられない。