初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 挨拶を、と耳元でささやかれたオネルヴァは、ぱっとエルシーと手を離してドレスの裾を持ち上げた。
「お初にお目にかかります。オネルヴァと申します」
「エルシーです」
 エルシーも拙いながらも、同じように挨拶をした。
「イグナーツ殿が今まで隠していた理由がわかったよ」
 レジナルドは、ははっと笑う。
「おい」
 そんな彼は、少し先にいた女性に声をかけた。焦げ茶の緩やかに波を打つ髪の女性がくるりと振り返る。
「私は『おい』という名前ではないと、何度申し上げたらわかるのでしょうか」
 意思の強そうな目が印象的である。年はレジナルドよりもいくらか若いようにも見えたが、オネルヴァよりは年上だろう。年相応の落ち着きというものが感じられた。
 レジナルドは隣に女性を呼び寄せ、何やら耳打ちをする。その言葉に、女性の表情もぱっと明るくなっていく。
「私の妻、リオノーラだ。リオノーラ、こちらがイグナーツ殿の……」
 リオノーラは気さくな女性であった。
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