初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 リオノーラに案内され、庭園の奥へと進んでいく。オネルヴァの右手はしっかりとエルシーと握られたままである。
 案内された先にもいくつか小さなテーブルが並んでおり、女性や子供たちが多くいた。
「アーシュラ王女様の誕生日パーティーと言ってもね、まだまだこちらにはいらっしゃらないのですよ」
 片目を瞑ってそう口にするリオノーラは、こういった場は詳しいのだろう。
 エルシーも不安なのか、じっとオネルヴァを見上げていた。もしかしたら、オネルヴァ自身も気づかぬうちに、顔が強張っていたのかもしれない。
「プレンバリ将軍が結婚されたと伺ってはおりましたが、なかなか公の場に来てくださらないから」
 オネルヴァは、リオノーラのその言葉に胸が苦しくなった。
 結婚したといっても、書類上の夫婦だ。まして、イグナーツの妻ではなく、エルシーの母親として求められている。いや、イグナーツの妻ではなく、彼の魔力の無効化役だ。
 だから、夫婦といってもリオノーラとレジナルドのような関係ではない。そう思うと、胸の奥が軋んだかのように痛む。
「それに、キシュアス王国からいらしたとなれば、私たちもいろいろとお話が聞きたいのよ」
 その話の内容がどういったものか。緊張で心臓がトクントクンと打ちつけている。
 そんなオネルヴァの気持ちを悟ったのか、エルシーが握っている手にきゅっと力を込めた。彼女が、「大丈夫」と励ましてくれるような、そんな感じがした。
「殿方なんて、こちらの事情のことなどまったくわからないでしょう? オネルヴァ様が、何か不便を感じているのではないかと、思っておりましたのよ」
 そこでリオノーラはパンパンと手を叩く。
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