初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「エルシーいなくなったの、僕のせい……一緒に、かくれんぼしていたから……」
 ジョザイアはしゅんと肩を落としている。問い詰めたいところでもあったが、今はエルシーを探すのが先である。
「エルシーはどちらに?」
 逸る気持ちを落ち着かせ、ジョザイアから話を聞く。
 庭園は幾何学的な形を作りながら、子どもの背丈のあるほどの花木が立ち並ぶ。大人であれば遠くを見渡せるが、子どもであれば花木に紛れてしまうのも可能だ。
 ジョザイアから場所を聞き出したオネルヴァは、周囲が止めるのも聞かずに、その場を後にする。
 初めて訪れる場所。エルシーの目線であれば、先を見通すこともできずに不安になるだろう。
 ジョザイアが言うには、花のアーチによって飾りつけられた小路の先には噴水があり、その周辺で遊んでいたとのことだった。
 噴水には水がためられている。水の怖さは、オネルヴァ自身よくわかっている。幾度となく、そういうことをされていたからだ。
「エルシー?」
 探し人の名を呼ぶ。
 カサカサと草花が風によって擦れる音がする。人が集まっている場所からは離れてきたが、それでも風にのって声が流れてくる。
「エルシー?」
 ジョザイアが言っていた噴水が目の前に見えてきた。チョロチョロと水の流れる音が、聞こえてくる。
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