初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 噴水の前に辿り着くと、青い空からさんさんと太陽の光が降り注いでいた。その眩しさに思わず目を細くする。それでも鍔の大き目の帽子が日陰を作っているのが、せめてもの救いだった。
 空の明るさは噴水にも反射して、その存在を輝かせていた。
 カサリと、近くの花が音を立てる。
「お母さま?」
「エルシー」
 彼女は軍服姿の女性と手を繋いでいた。
「お母さま」
 女性の手をぱっと離したエルシーは、オネルヴァの元へ駆け寄ってきた。身を低くして、オネルヴァは彼女を抱きしめる。
「あぁ……エルシー。心配したのですよ」
「ごめんなさい、お母さま」
「あの……ありがとうございます」
 エルシーの側にいた女性軍人に向かって礼を口にした。
「どうやら、迷子になられたようでして。広い庭園ですからね」
「ジョザイアとかくれんぼしていたら、わからなくなっちゃった」
「あの、失礼ですが。奥様は……」
 エルシーと一緒にいた彼女はイグナーツの部下だった。イグナーツによく似た女の子がいたから、声をかけたと言う。
「あ。実は、閣下にも……」
 さらに、同僚に頼んでイグナーツに連絡をいれてもらっているらしい。それはエルシーを見失って心配しているだろうという配慮のためでもあった。
 そして彼女は、エルシーと共に会場へと戻るところであったと言う。
「本当に、ありがとうございます」
「子供たちにとっては、遊び場のようなところですから」
 もしかしたら、彼女自身にもそういった思い出があるのかもしれない。
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