初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「あら? 閣下がこちらまでいらっしゃるのは、想定外でした。では、持ち場に戻らせていただきます」
びしっと頭を下げた彼女は、足音が近づくよりも素早い動きで向こう側へと消えていく。
響くブーツ音に振り返る。
「旦那様……」
「お父さま……」
慌ててやってきたに違いない。人前では表情を崩さない彼が、呼吸を乱している。隣には、先ほどの女性と同じような軍服を着ている男性の姿もあった。
イグナーツが幾言か言葉をかけると、彼はすっとその場を離れていく。
「君たちは……何をやっているんだ。あちらの会場にいたのではないのか?」
低い声が、オネルヴァの身体の奥に突き刺さった。
エルシーと共にいた以上、母親であるオネルヴァには彼女の行動に責任を持つ必要がある。
「申し訳……ございません」
オネルヴァは消え入るような声で、頭を下げた。
「いや、謝ってもらいたいわけではない。ただ……心配をしたんだ」
イグナーツの手が伸びてきた。
オネルヴァはびくっと身体を強張らせ、エルシーと繋がれた手にも力が込められる。
伸びてきた彼の手は宙で止まる。
チロチロと噴水が先ほどから音を立てていた。
びしっと頭を下げた彼女は、足音が近づくよりも素早い動きで向こう側へと消えていく。
響くブーツ音に振り返る。
「旦那様……」
「お父さま……」
慌ててやってきたに違いない。人前では表情を崩さない彼が、呼吸を乱している。隣には、先ほどの女性と同じような軍服を着ている男性の姿もあった。
イグナーツが幾言か言葉をかけると、彼はすっとその場を離れていく。
「君たちは……何をやっているんだ。あちらの会場にいたのではないのか?」
低い声が、オネルヴァの身体の奥に突き刺さった。
エルシーと共にいた以上、母親であるオネルヴァには彼女の行動に責任を持つ必要がある。
「申し訳……ございません」
オネルヴァは消え入るような声で、頭を下げた。
「いや、謝ってもらいたいわけではない。ただ……心配をしたんだ」
イグナーツの手が伸びてきた。
オネルヴァはびくっと身体を強張らせ、エルシーと繋がれた手にも力が込められる。
伸びてきた彼の手は宙で止まる。
チロチロと噴水が先ほどから音を立てていた。