初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
地方。オネルヴァは、ほとんどの時間を屋敷の中で過ごしている。外に出るのも、庭園を散歩するときくらいだ。
だが、イグナーツはゼセール王国の北の将軍と呼ばれているだけあり、北の領地を治めているはずだ。
「アルヴィドお兄様も、北の関所を越えてきたのですか?」
「そうだな。できれば、あそこの領地の視察もしたいと考えている。なによりも、我がキシュアス王国との国境だからな」
オネルヴァも、こちらに嫁いできたときにはあの関所で一泊した。時間があれば、もう少し先にある領主館での宿泊も検討されたようだが、あの時間からさらに領主館への移動となればオネルヴァの負担になると判断されたらしい。だが、あのテントでの宿泊も悪くはなかった。テントは正式には移動式住居と呼ばれているもので、中は充分に広く温かった。
関所には立派な石造りの城壁があり、そこに常駐している者たちは城壁の内部で寝泊まりしている。
だが、関所という要の場所であるだけに、よそ者を内部に入れることはできない。そのため、関所を越える者が宿泊を必要とするときには、テントを用いているとのことだった。
「どうかしたのか?」
アルヴィドの顔を見つめたまま、何も言わないオネルヴァに不安になったのか、彼は顔を曇らせた。
「いえ……。わたくしも、領地に足を運んだことがなかったので。機会があれば行ってみたいと、そう思っただけです」
「そうか」
沈黙が落ちた。
アルヴィドと話すときは、会話が途切れてしまう。お互いに、口数が多いほうでもないし、何を話したらいいのかがわからなくなるのだ。
だが、イグナーツはゼセール王国の北の将軍と呼ばれているだけあり、北の領地を治めているはずだ。
「アルヴィドお兄様も、北の関所を越えてきたのですか?」
「そうだな。できれば、あそこの領地の視察もしたいと考えている。なによりも、我がキシュアス王国との国境だからな」
オネルヴァも、こちらに嫁いできたときにはあの関所で一泊した。時間があれば、もう少し先にある領主館での宿泊も検討されたようだが、あの時間からさらに領主館への移動となればオネルヴァの負担になると判断されたらしい。だが、あのテントでの宿泊も悪くはなかった。テントは正式には移動式住居と呼ばれているもので、中は充分に広く温かった。
関所には立派な石造りの城壁があり、そこに常駐している者たちは城壁の内部で寝泊まりしている。
だが、関所という要の場所であるだけに、よそ者を内部に入れることはできない。そのため、関所を越える者が宿泊を必要とするときには、テントを用いているとのことだった。
「どうかしたのか?」
アルヴィドの顔を見つめたまま、何も言わないオネルヴァに不安になったのか、彼は顔を曇らせた。
「いえ……。わたくしも、領地に足を運んだことがなかったので。機会があれば行ってみたいと、そう思っただけです」
「そうか」
沈黙が落ちた。
アルヴィドと話すときは、会話が途切れてしまう。お互いに、口数が多いほうでもないし、何を話したらいいのかがわからなくなるのだ。