初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 抱き寄せられ、腰に手が回る。オネルヴァもそれに応えた。
「君が閣下と踊っている姿を見てね。とても素敵だったよ」
「ありがとうございます。あのように、大勢の前で踊るのは初めてでしたので」
 先ほどと感覚が異なるのは、彼らの体格の違いだろうか。
「他の男が、君をダンスに誘いたそうにしていた。だけど、閣下が睨みをきかせていたからね」
「そうなんですね」
「君は、キシュアスにいたときよりも、綺麗になったよ」
「アルヴィドお兄様は、お上手ですわね」
 オネルヴァがふふっと笑うと、身体がふわりと浮いた。
「きゃ。アルヴィドお兄様。そのようなこと、突然されたら驚きます」
「オネルヴァが笑っているからね。あそこにいたとき、そういった笑顔を見せてくれなかっただろう」
 指摘されて、はっとする。キシュアス王国にいたときは、笑ったことなどなかった。
「そうだったかもしれませんね……」
「君を笑顔にしてくれたのは、閣下かな?」
 そこでアルヴィドは、ダンスを止めた。
「だが、閣下は……君のすべてをもう知ったのかな? 例えば、その背中とか……それを知ってもあの態度であれば、君を閣下に任せてよかったと、心からそう思える……」
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