初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 アルヴィドの言葉にオネルヴァは息を呑んだが、何も言えなかった。アルヴィド自身も、どこか苦しそうに目を細くしている。
「アルヴィドお兄様? どうかされました?」
「君の夫君が怖いくらいにこちらを睨みつけているからね」
 それは先ほども聞いた言葉でもある。
「俺は、彼と敵対するつもりはないよ」
 そう言ったアルヴィドは、オネルヴァの身体を解放した。そして、イグナーツの側に行くようにと、そっと背中を押す。
「旦那様。お話は終わったのですか?」
 オネルヴァは微笑みを湛えて、イグナーツにゆっくり近寄る。彼はバルコニーの入り口付近から動かず、ただこちらを見つめていた。
「ああ……」
「閣下。俺はこれで。どうか、我が可愛い妹のことを、これからも頼みます」
 二人をその場に残し、アルヴィドはさっと城内へと戻っていく。
「旦那様? どうかされましたか?」
「いや……。そろそろ戻ろうか」
 イグナーツの差し出した腕に、オネルヴァは自身の手を絡めた。
 その温もりに、なぜかほっと安心した。
< 184 / 246 >

この作品をシェア

pagetop