初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「は、はい……」
「ほ、本当か?」
「つまり、これからわたくしは旦那様の形だけの妻ではないということですよね?」
 そう口にしてみたが、形だけの妻とそうでない妻の違いすらわからない。
 イグナーツが不在のときは、この屋敷の女主人としてやるべきことをやっていたつもりではある。そういった内容を、もっと深く、もっと濃くこなせという意味なのだろうか。
「そうだ……。俺は、君を抱きたいと思っている」
「今も、こうやって抱きしめてもらっております」
 オネルヴァがはにかむと、イグナーツは困ったように目尻を下げた。
「君は……そういった教育は受けていないのか?」
「教育、ですか? 家庭教師の先生はおりましたが……」
 イグナーツの目が、不規則に動いている。顔も、少しだけ赤くなっているようにも見える。
「できれば、俺は……君との間に子を授かりたいと、そう思っている……」
「エルシーも、弟妹が欲しいと言っておりました。ですが、そればかりは授かり者と聞いておりますので……」
「そうだな……。つまり、だ。その子を授かるような行為を君に求めたいのだが、よいだろうか?」
 オネルヴァは驚き、目をぱちぱちといつもより激しく瞬いた。
「子を授かる、行為……ですか?」
 てっきり子供は、愛し合う夫婦のもとに神様が授けてくれるものだと思っていた。
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