初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 そうやってあれこれと確認して、相談して、計画を立てているだけで一日が終わってしまった。
 アルヴィドがやってくるのは、明後日と聞いている。ここで数日滞在した後、そのまま北の関所へと向かい、キシュアス王国へと戻るとのこと。
「お母さま。お仕事、終わりましたか?」
 サロンでお茶を飲んでいると、うさぎのぬいぐるみを抱きしめたエルシーが遠慮がちに声をかけてきた。
 窓から差し込む陽光は、長い影を作っている。
「ええ、今日のお仕事は終わりました。エルシーも一緒にお菓子を食べますか?」
「はい」
 オネルヴァがにっこりと微笑めば、エルシーも同じように満面の笑みを浮かべる。そして、隣にちょこんと座った。
「明後日には、アル兄さまもこちらにいらっしゃいますからね」
「お客様がおうちにくるのは、初めてです」
 ヘニーはエルシーのために、ホットミルクを準備してくれた。
「そうなのですね?」
 イグナーツの立場を考えれば、不思議でもないのかもしれない。軍の仕事で屋敷を空けることも多く、オネルヴァが嫁ぐまでは独り身だった。
「奥様、お嬢様。明日の午後であれば、街を見学するためのお時間が取れますよ」
 そう口にしながら、ヘニーはエルシーの前にケーキを並べた。ケーキの小皿を手にしたエルシーは、ヘニーの言葉の意味を確認するかのように首を傾げる。
 オネルヴァは微笑んでエルシーに言葉をかける。
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