初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「似たような建物が多いのですが、お店は外にああいった看板が出ています。まあ、この道沿いに並んでいるのはほとんどが店ですね。馬車も通れるような道幅ですし。裏の路地に入ると民家が多くなります。こういった街並みはどこも似たようなものだと思いますよ。まずは、この道沿いをゆっくりと歩いてみましょうか。疲れたらどこかのお店で休憩する。そんな感じでいいですかね」
 そんな感じもどんな感じもオネルヴァには分からないため、ミラーンの提案にのる。
 昼を少し過ぎた時間帯であるため、街のメイン通りは買い物をする者で溢れていた。
「あ、ミラーンさん。お部屋から見えた大きな建物が気になっていたのですが。レンガのような外壁の建物です」
 その言葉だけでミラーンはどこかがわかったようだ。ポンと左の手のひらを右手で作ったこぶしで叩く。
「あれは、酒蔵ですね。果実酒を作っているところです。果実水も作っていますが。行ってみますか? レストランも兼ねているので、試飲もできますよ。夜は酒場になります」
「領地の東側では葡萄園がありまして、そちらの葡萄を使って葡萄酒も作っているのです」
 ヘニーが言葉を補った。
 そう話を聞くと、行ってみたいと思えてくるから不思議なものである。エルシーにも尋ねると、彼女も行きたいと言う。
「じゃ、決まりですね。行きましょう」
 当てもなく街をぶらぶらとするのも楽しそうであるが、目的があると別の楽しみもある。
 ミラーンに案内されて、酒蔵へと足を向ける。
「ここが、ジナース酒蔵です。ただ、酒蔵というよりはレストラン、酒場といったほうがここの人には馴染はありますね」
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