初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
◇◆◇◆ ◇◆◇◆

 チャポン、チャポン……。
 どこからか水の滴る音が聞こえる。身体が痛くて、何かに触れているところからは冷気を感じる。
「んっ……」
 身じろぐと、意識がはっきりとしてきた。
「あら、お目覚め?」
 その声の主を確かめようと目を開けた。
 だが、見慣れぬこの場所。硬い石の床の上に転がされていた。身体が痛くて、冷たい。
「返事もできないのかしら? オネルヴァ・イドリアーナ・クレルー・キシュアス。いえ、今はただのオネルヴァ・プレンバリだったかしら? もう、キシュアスの第二王女でもなんでもないのよね。あ、違ったわ。あそこに第二王女なんてもともといなかったの」
「お母様……」
「あなたに、私をお母様と呼ぶ権利はありません。この『無力』が!」
 オネルヴァはのろのろと身体を起こした。身体を起こしながら、自分が置かれている場所を冷静に判断する。
 地下牢。そう呼べるような場所だ。
 目の前にいる彼女とは鉄格子によって隔てられている。オネルヴァがいるほうが牢である。
「『無力』であるあなたを産んで、私がどれだけ惨めだったかわかるかしら? 『無力』は罪なのよ?」
 鉄格子の向こう側から威圧的に見下ろしてくる。母親でありながらも、彼女はいつもこうやって冷たい視線でオネルヴァを見つめていた。
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