初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 カトリオーナに拘束具をつけたのはアルヴィドであった。
「情をかけて修道院へと送りましたが、あなたにはいらぬものでしたね」
「オネルヴァ……。何もかも、あんたのせいよ……」
 カトリオーナの眼は血走っており、きつくオネルヴァを睨みつけてくる。
「なぜ『無力』が蔑みの対象となっているかわかる? 国を傾けるからよ。『無力』がいると国が亡びるの。だから、あなたの父親も兄もみんな死んでしまったでしょう? あなたのせいよ」
 石造りの牢内に、女の金切り声が響いた。
「違うな」
 オネルヴァの腕を掴んでいるイグナーツが、静かに言い放つ。
「キシュアスの前王が討たれたのは、オネルヴァが『無力』だからではない。民のことを顧みず、己の欲にまみれたのが原因だ」
「違う。この子のせいよ。この子が『無力』だから。この子のせいで、あの人は……。私は……。お前なんて、産まれてこなければよかったのに!」
 オネルヴァだってわかっていた。そうでなければ、二十年以上もあんな場所に閉じ込められていない。生きているのに、いないような存在とされていたのだ。
 だが、これでわかった。『無力』であるのが罪な理由。それは国を亡ぼす。だからオネルヴァの父であった前王は討たれた。
 目の前の女は、そう思っているのだ。
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