初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 ミラーンは他の客には眠りの魔法を使ったらしい。そしてオネルヴァも薬で眠らせ、システラ族の仲間がいる馬車へと彼女を運んだ。
 ミラーンがオネルヴァを連れてきたことで、システラ族はミラーンをより信用した。
 その後、彼らと共にあの場所へと向かい、オネルヴァを地下牢へと閉じ込めた。オネルヴァが乱暴されても、ミラーンは止めなかった。それが作戦のうちといえばそうなのだが、それでも彼の心の中には葛藤があったようだ。
 その話を聞いたのは今日。
 彼は葡萄酒と葡萄水を籠いっぱいにいれて、この屋敷を訪れた。そしてオネルヴァの姿を見るなり、床に膝をついて頭を下げて謝罪した。その頭も床につくほど、深く下げた。
「ミラーンさんには驚きましたけれども」
「君を巻き込んでしまったことを、悔やんでいるようだな」
「それって、旦那様がお怒りになったからではないですよね?」
「ん?」
 そう言った彼は、右目だけを大きく広げている。意味ありげなその顔に、これ以上を聞くのはやめようと思った。
「旦那様は、どうしてあの場所がわかったのですか? ミラーンさんから聞いていたのですか?」
「いや」
 彼はオネルヴァの左手の薬指に触れた。そこには彼との関係を示す指輪がはめられている。彼と身体を重ねた次の日。イグナーツがどこか照れくさそうにこの指輪をくれたのだ。そして、互いにその指にはめ合った。
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