初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「旦那様。エルシーが手紙を読んで、すぐにお返事が欲しいと言っておりました」
二人だけの静かなティータイムを終えようとしたときに、オネルヴァはいつまでたっても手紙を読まないイグナーツに向かってそう言った。
「すぐに? 何か、大事なことが書かれているのか?」
あとでこっそりと読もうとしていたにちがいない。エルシーからの手紙を手にしたイグナーツは立ち上がり、執務席の引き出しからペーパーナイフを取り出すと、丁寧に閉じられていた封筒をピリピリと開ける。
中から出てきたのは便箋一枚。それでも幼いエルシーが書いたと考えれば、立派なものだ。
手紙に目を走らせているイグナーツの眉間に、次第に深く皺が刻まれていく。
「どうか、されましたか?」
ドレスを握りしめながら、オネルヴァは尋ねた。
「いや……。エルシーが人参を食べられるようになったら、なんでも言うことをきくと言っていたからな。その件だ」
「夜、一緒に寝たいと、エルシーは言っておりましたね」
「ああ……。それはいつだ、と書かれている」
「まぁ」
エルシーの手紙の愛らしさに、オネルヴァは目尻を下げた。だが、イグナーツは困惑しているようにも見える。
二人だけの静かなティータイムを終えようとしたときに、オネルヴァはいつまでたっても手紙を読まないイグナーツに向かってそう言った。
「すぐに? 何か、大事なことが書かれているのか?」
あとでこっそりと読もうとしていたにちがいない。エルシーからの手紙を手にしたイグナーツは立ち上がり、執務席の引き出しからペーパーナイフを取り出すと、丁寧に閉じられていた封筒をピリピリと開ける。
中から出てきたのは便箋一枚。それでも幼いエルシーが書いたと考えれば、立派なものだ。
手紙に目を走らせているイグナーツの眉間に、次第に深く皺が刻まれていく。
「どうか、されましたか?」
ドレスを握りしめながら、オネルヴァは尋ねた。
「いや……。エルシーが人参を食べられるようになったら、なんでも言うことをきくと言っていたからな。その件だ」
「夜、一緒に寝たいと、エルシーは言っておりましたね」
「ああ……。それはいつだ、と書かれている」
「まぁ」
エルシーの手紙の愛らしさに、オネルヴァは目尻を下げた。だが、イグナーツは困惑しているようにも見える。