初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「俺は……。少し仕事が残っているから、また、誘ってくれ」
 イグナーツも身体を起こして、エルシーの頭をくしゃりと撫でた。少しだけ、うらめしそうに見つめてくる。
「では、リサを呼びましょうね」
 寝台の脇にある小さなテーブルの上に置かれているベルをオネルヴァが手に取り、チリリンと鳴らす。
 すぐさまリサがやってきた。
 エルシーを彼女に託すと、イグナーツはエルシーの部屋をあとにした。
 とにかく、溢れ出そうとする魔力をなんとかする必要があった。原因はわかっている。オネルヴァを見たからだ。
 身体の奥が疼く。そして、魔力が彼女を欲している。
 よくない兆候だ。
 イグナーツは唇を噛みしめ、力を入れて歩きながら、執務室へと向かった。
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