緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
(ここから東の国は遠いし、届くまでに枯れちゃうだろうなぁ……)

 私はキルシュブリューテに思いを馳せながら、いつか世界の流通が発展して、遠い国の植物が簡単に手に入る日がくればいいな、と思う。



 * * * * * *



 日に日に寒くなり、街が冬支度の買い物に出る人達で賑やかになる頃、温室で育てていたマイグレックヒェンの花が咲いた。

「わぁ! 凄く可愛い!」

 十数個の小さな蕾が、すっと伸びた花径に並んでいる。根本に近い蕾から咲くらしく、白くて小さな花が1個下向きに咲いている。
 もうしばらくすると全ての蕾が開き、コロコロとした可愛い花を鈴なりに咲かせてくれるだろう。

(……やっぱり白い花が咲いたなぁ)

 北の国で咲いているマイグレックヒェンは紫色だと聞いていたので、予想していたとはいえ真っ白い花が咲いたマイグレックヒェンを不思議に思う。

(まだ球根はあるし、土を変えて育ててみようかな)

 もしかして土を変えると違う色になるのかもしれない、と考えた私は早速土を作ることにする。
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