二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 立ち上がったかと思うと、また座り、さらに立ち上がっては座り、という奇妙な動きを繰り返し始めた拓人に、香澄の涙はぴたと止まった。
 一般人だったら、もはや恐怖にしか思えない奇妙な行動。夢でうなされるケースすら想定できるだろう。
 だが、香澄は違った。
 手にはいつものように、しっかりスマホを握りしめながら

「先輩……その行動には何か意味があるんですか?」

 と、取材モードに突入していた。

「ええ、おお、あり、よ!!」

 あまりにも激しい動きだからだろうか、拓人は息切れしながら返答するが、それでもやめようとしない。
 引きこもり歴が長く、かつ妊娠中の香澄には絶対できないだろうと香澄は考えたからこそ

「その意味を教えてもらっても?」

 と真剣に尋ねた。

「聞きたい?今?」
「え?」
「ほんとに?」
「え?え?」

 何故、拓人が繰り返し聞くのか香澄は全く理由が思い当たらなかったが、迫力に負けてこくこくと頷いた。

「…………少しは助けてあげようかと思って情けをかけたのが間違いだったわ」
「せ、先輩?何を言って」
「しっかり反省してもらわなきゃ、私が気が済まないわ!!」
「え?え?」

 そう言った拓人は、立ち上がったと思ったら急に床にしゃがみ込んだ。
 それからソファの下に手を伸ばしたかと思うと

「ほら公害!!どういうことか説明してもらおうじゃないの!!」

 と言いながら何かを引っ張り出した。
 香澄はその瞬間「きゃー!!!!!」と悲鳴をあげてしまった。
 2人きりだと思っていたソファの下から、いきなり人間の足が出てきたら、香澄でなくても驚くのは仕方がない。
 ただ、後にこの足の正体が涼だと知り、諸々の経緯で丸く収まった後でも、香澄はこの時の出来事を都度拓人にこう話すようになった。

「今日も見ましたよ……拓人先輩がどこぞの死体を引っ張り出す夢」
「どうしていつも私なの!!」

 それほどのインパクトを与えるくらいには、拓人の表情は狂気じみていたのだった。
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