二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 そんな涼はといえば。
 拓人からの繰り返される強烈な尻攻撃に、どうにかこうにか耐えながらも考えることは、ただ1つ。

(僕の一体何が、香澄を追い詰めたのだろう?)

 どちらかといえば、自分の方がよっぽど香澄に追い詰められている、と涼は思っている。
 もちろん、グッズを……これについては故意ではないとは言え……雨でずぶ濡れにしたという前科はある。
 今でこそ香澄の兄のような存在……これについては、全く血が繋がっていないのだから、そう考えないと嫉妬で狂いそうになる……の勇気が香澄を気にかけ、かつ香澄も自分と話す時よりもずっと楽しそうに彼と話をしていると、見ているだけで心臓が痛くなる。
 イライラして、八つ当たりしたい時は拓人を利用してどうにか抑えてはいるものの、同じ空間にあの2人が揃う時は嫉妬の炎で体がチリチリに焼けそうになる。
 こんな想い、これまで一度たりとも経験したことがなかった涼は、対処の仕方も分からない。
 一般人であれば、青春時代に失恋経験をすることもあるだろう。そういう経験が一度でもあれば、また違った対応も涼でもできたかもしれない。
 だが、涼の辞書に失恋という言葉はまだ、書き込まれていない。ギリギリ書き込まれそうになったところをどうか阻止した、の方が正しいかもしれないが。
 涼は、芽生えた他者(男)への嫉妬の昇華方法を知らない。
 だから拗らせて、墓穴を掘ったのだった。

(こんなはずじゃなかったんだ……)

 ただ、香澄のことが大切だから。
 誰にも取られたくないから。
 ずっと一緒にいたいから。
 根本にある願いは、たったそれだけ。
 されど、どうしてそれだけしか求めてないのに、それこそが涼には難しいのか。

(とは言え、さすがにそろそろ腰がまずいことになりそうだな……)

 自業自得なところがあると分かっていたから、甘んじて拓人からの攻撃は受けてあげていた。
 だが、男にとって腰は命。
 これ以上は、さすがに遠慮したいと涼が考えたその時、起きた。

(な、なんだ!?)

 と考える間に足が思いっきり引っ張られると同時に、香澄の可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
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