二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 香澄が逃げ去る時、涼はすぐにでも追いかけようと立ち上がろうとした。
 が、拓人によって与えられた腰のダメージから、ほんの少し立ち上がるのに時間がかかってしまった。
 そのほんの数秒を拓人に与えたことで

「こんの…………どこまで人を追い詰めれば気が済むのよ……息吸ってるだけで公害男!!!」

 などと言われながら、涼は拓人にのしかかられてしまった。
 
「あんたねぇ!!!!ほんといい加減自分の気持ちばっかり香澄に投げつけるの、まじでやめなさいよ!!いい大人が、ほんっとみっともない!!!!」
「な、なんのことだ……」

 と涼が口を開けば、さらに拓人が圧力をかけてくる。
 これがマッサージであれば完璧な効果をもたらすほどの力を、拓人はわざと痛みを与えるためだけに使っている。

「聞いてれば、あなた……香澄を被告人追い詰めるような問いかけをしたんですって?」
「そんなことしてな」
「いとか言ったら、この首に私の爪差し込むわよ」

 拓人は、先日綺麗に整えてもらったばかりのネイルを涼に見せながら言った。キラキラした宝石のようなパーツがついており、拓人の美しさを際立たせている、凝ったデザインだった。
 ただし、体内に入ろうものなら即、涼の命を奪う凶器にもなりかねないものでもあった。

「香澄が何か答えるたびにどうして?どうして?って……お前は3歳児の子供か!?香澄はあんたのお母さんじゃ、ないのよ!!」
「どうしてそうなる!!」
「それはこっちが聞きたいわ!!あの子と暮らして、一体あの子の何を見てきたのよ!馬鹿野郎!!あんたがどんな声のテンションだったのかはどうでもいいけど、これまでのあの子のことを考えなさい!!毒BBAどもの口撃を受け続けて心を閉ざしたのよ!!」
「あ……」

 ここでやっと、拓人の言いたいことが涼にも理解することができた。
 そして……。

「そんな人間に、責めるような口撃繰り返してごらんなさい!!!せっかく塞ぎかけた傷跡を思いっきり開けて、重傷化させることになるって、どーしてあんたは気づかないの!!!」

 涼は、自分が2つ目の大失敗をしたことに、ようやく自覚が持てたのだった。
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