二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 拓人は、息を吸う間も無く、言いたいことを全部言い切ったので、苦しくなり咳き込んでしまった。
 けれど、もう言わずにはいられなかった。
 涼の、あまりにも香澄のことを考えない、押し付けがましい愛し方を見続けていた。
 一見すると、微笑ましいかもしれないこの猛烈な溺愛っぷりは、これまでの涼のアンバランスな生き方を証明している。
 相手がどんな愛情ならぎりぎり受け止められるのか。
 どんな行動や言葉が相手の重荷になるのか。
 そういう相手視点の思いやりが、涼には徹底的に欠けているのだ。
 確かに、涼はこれまでのどクズな生き方……女をハベらしてはポイ捨てしたり、すぐにゲーム感覚で相手を蛇のように追い詰めてプライドをへし折るようなことは、香澄と暮らしてからはしていないように、拓人には見えている。
 弁護士仕事ではどうか知らないが。
 だが、見た目はエリートぶったいい大人でも、中身……特にコミュニケーション年齢は小学生。恋愛偏差値に至っては20あればいい方ではないだろうかと、拓人はこれまでの言動から推察していた。
 だから、心のどこかで拓人は恐れていた。
 涼の持つ爆弾が爆発して、香澄が怪我をするのではないか。
 それがものの見事に今日、起きたと言うわけだった。
 
「どう?分かった?あんたがやらかしたことは!」
「……ああ……」
「本当に?」
「ああ……」
「そう……」

 言いたいことを言ってスッキリしたはずの拓人だったが、残念ながら最後の最後最大の悪役にはなりきれない程、拓人は根は優しかった。
 だから、本来であれば「このまま拗らせてしまえ」言葉を投げつけたまま、香澄と涼を引き剥がすだけで良いはずのこの場面でも、拓人は動いてしまった。

「反省してる?」
「してる」
「本当に?」
「ああ」
「じゃあ、良いわよね」
「何がだ?」
「ん?」

 拓人はスマホの画面に表示した連絡先を涼に見せながら、きっと涼が最もやりたくないであろうことを命じた。

「彼が、この課題を解決する切り札だけど、あなたが、ちゃんと詫びながら連絡しなさい。僕を助けてください、勇気お兄様……ってね」
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