二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「私は正直気分が良いわ。ああやって地べたに這いつくばって、私たちがしてきた苦労を味わってくれてるんだもの。動画にして辛い時に眺めたいわね」

 ああそれで拓人は今、スマホのカメラを涼の方に向けているのかと、香澄はようやく気づいた。

「でも、あなたはどう?」
「私?」
「ちょっとしたことでパニックになって、泣いてしまうくらい苦しい想いは、人を愛してしまえば誰にでも起きてしまうことなの。……原因があいつなのは、ひっじょーうに、癪だけど」
「それは……」
「お腹の赤ちゃんのことは抜きにしても……あんなあいつと、これから一緒にやっていけるか、今のあいつの背中や顔を見て決めてみてもいいんじゃないかしら」

 そう言うと、拓人はそっと香澄をソファに座らせた。
 涼はまだ、香澄がすぐ側にいることには気づいていない。

「私は…………」

 香澄は、じっと涼の背中を見つめた。
 そして考えた。
 本当にこのまま、涼との人生を選んでいいのかを。
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