二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
香澄にとって、涼との出会いは奇跡以外の何者ではない。
涼との出会いのきっかけは(あくまで香澄側は)仕事がなくなるかもしれない恐怖。
いつかは、訪れたかも知れなかった「恋愛シナリオライター」としての壁。
それが、あの時期にやってきて、清水の舞台に飛び込むような思いでホテルのラウンジに行ったのだ。
後々、涼によって仕組まれたものだと教えてもらったとしても。
もしも、あの決断の時期がずれていたら。
もしも、自分が直前で逃げていたら。
そもそも、涼が自分を探していなければ……そして見つけてくれなければ、きっと今の香澄は存在しない。
過去に閉じこもり、過去の抱きしめたまま、過去と共に死んでいく。
涼と出会う前と直後は、そんな生き方こそが自分の正解だと信じていた。
でも、あの頃には想像もしなかった全く違う未来に今、香澄は立っている。
今なら、戻れるかも知れない。
埃だらけの、自分だけを包む空間に。
だけど香澄が前を向けば、いるのだ。
香澄を必要とし、香澄のために汗をかいてくれる、奇跡のような素敵な人が。
そして香澄は、その人の背中が見えない未来を想像した瞬間、また泣きそうになった。
離れていかないでと、言いたくなった。
「先輩……」
「ん?」
「私、考えてみたんです」
何をとは、拓人は聞かなかった。
分かっているのだろうと、香澄は何故かすんなり思えた。
だから、拓人の返答を待たず、香澄は前だけを見ながら言った。
「先輩は、見極めなさいって言ってくれて……」
「そうね」
「でも、涼先生を見極めるっていうのはどうしてもおこがましくて……」
「…………そう……」
「だから、自分を見極めてみました。涼先生がいないこれからの未来を、耐えられるのかって」
「それで、見極められたの?」
「はい。だから」
そう言うなり、香澄はそっとリビングの扉に向かった。
拓人も、一緒にリビングを出て玄関まで行った。
香澄は、お腹をかばいながら靴を履き、優しくお腹に向かって
「お家でパパを待ってようね」
と囁いてから、拓人に振り返る。
「先輩、涼先生に伝えてもらっていいですか」
「何を?」
「お待たせしていたお返事は今日の夜します。だからお家で待ってます……って」
涼との出会いのきっかけは(あくまで香澄側は)仕事がなくなるかもしれない恐怖。
いつかは、訪れたかも知れなかった「恋愛シナリオライター」としての壁。
それが、あの時期にやってきて、清水の舞台に飛び込むような思いでホテルのラウンジに行ったのだ。
後々、涼によって仕組まれたものだと教えてもらったとしても。
もしも、あの決断の時期がずれていたら。
もしも、自分が直前で逃げていたら。
そもそも、涼が自分を探していなければ……そして見つけてくれなければ、きっと今の香澄は存在しない。
過去に閉じこもり、過去の抱きしめたまま、過去と共に死んでいく。
涼と出会う前と直後は、そんな生き方こそが自分の正解だと信じていた。
でも、あの頃には想像もしなかった全く違う未来に今、香澄は立っている。
今なら、戻れるかも知れない。
埃だらけの、自分だけを包む空間に。
だけど香澄が前を向けば、いるのだ。
香澄を必要とし、香澄のために汗をかいてくれる、奇跡のような素敵な人が。
そして香澄は、その人の背中が見えない未来を想像した瞬間、また泣きそうになった。
離れていかないでと、言いたくなった。
「先輩……」
「ん?」
「私、考えてみたんです」
何をとは、拓人は聞かなかった。
分かっているのだろうと、香澄は何故かすんなり思えた。
だから、拓人の返答を待たず、香澄は前だけを見ながら言った。
「先輩は、見極めなさいって言ってくれて……」
「そうね」
「でも、涼先生を見極めるっていうのはどうしてもおこがましくて……」
「…………そう……」
「だから、自分を見極めてみました。涼先生がいないこれからの未来を、耐えられるのかって」
「それで、見極められたの?」
「はい。だから」
そう言うなり、香澄はそっとリビングの扉に向かった。
拓人も、一緒にリビングを出て玄関まで行った。
香澄は、お腹をかばいながら靴を履き、優しくお腹に向かって
「お家でパパを待ってようね」
と囁いてから、拓人に振り返る。
「先輩、涼先生に伝えてもらっていいですか」
「何を?」
「お待たせしていたお返事は今日の夜します。だからお家で待ってます……って」