二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「あんた、『二次元と結婚したい』云々話したの、覚えてる?」

 それを聞いた瞬間の、涼の苦虫を噛み潰したような顔を見た拓人は、覚えていると判定してサクサク次の話題へと進んだ。

「あんた、その理由を端的に説明してちょうだい」
「は?」
「弁護士でしょう?弁論なんてお手のものじゃない」
「そういうことじゃない。それが今、何の関係があるんだ」
「大アリよ」

 そう。
 二次元のキャラと結婚したいと夢見る理由。
 香澄がそう言ったか言わないかはこの際どうでもいい。
 大事なのは、結婚したいと考える人間の、無意識の欲望に辿り着けるかどうか。
 三次元ではなく二次元と結婚したい、その本質の1つにそもそも涼がたどり着く気があるのか。
 拓人が気にしたのは、まさにそこだった。
 でも、そこまで話してしまっては意味はない。
 涼が、自分で気づかなければ。
 でなければきっと、涼はこれからも香澄の奥底に眠る、香澄すら知らない欲望に気付かないまま、表の情報だけで香澄を振り回すことになる。
 拓人はそう確信していた。
 だから、試すのだ。
 自分のこの課題に、涼が真剣に向き合うのか。
 
「言っとくけど、逃げるなら今のうちだから」

 牽制はした。
 けれど涼はこう即答した。

「たっくんがこのタイミングで言うってことは、香澄に関わることだろ?やらない理由がないよね」
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