恋はひと匙の魔法から
「どっか行きたいとこある?」
西岡がそう尋ねてきたのは、食後のコーヒーを飲み終えた頃だった。
パフェは食べ終えたので、この商業施設に来た目的はすでに果たしたと言えるが、それを言ってしまえばこの幸せなひと時はたちまち終わりを迎えてしまうだろう。
それに、行きたいところがないわけではない。自分の買い物に西岡を付き合わせることへ罪悪感を覚えながらも、透子は頷いた。
「ここに行ってもいいですか?お鍋、見たくて」
スマートフォンの画面に表示させた、キッチン雑貨を扱う店の情報を西岡へ見せる。
かねてよりボーナスが出たら買おうと思っていたホーロー鍋の下見をしたかった。すると、西岡もグラスを買うと言うので、二人は真っ直ぐその店へと向かった。
先ずは透子が目を付けていた、有名な海外製のホーロー鍋の売り場へと向かう。今日買うわけではないが、ホーロー鍋は重量があるため実際に手に取って扱いやすいサイズを確認したかった。
何度か持ち上げて眺め回し、自分の手にしっくりくるサイズを確かめると、それをそっと棚に戻した。
「買わないの?」
「今日は見るだけって決めてたんで」
ボーナス云々は雇い主の前では言い辛い。透子は苦笑いで誤魔化すと、彼を促して今度はグラス売り場へと足を運ぶ。
「こういうのってどれがいいと思う?」
多種多様なグラスが並ぶ中、そう尋ねられた透子が選んだのは、どこの家にもあるような背の低いタンブラー。
グラデーションのように下にいくにつれて色が濃くなるよう美しく彩色されているものだ。色が十種類あり、どれを選んでも食卓が華やぎそうである。
その中の一つを手に取り、収まり具合を見た西岡は満足気に頷いた。
「うん、いいね。透子は何色好き?」
「……黄色ですかね?」
熟慮することなく軽く答えると、その言葉を受けた西岡が、黄色いグラスと濃紺のグラスの二つを手に会計へと向かった。
驚いたのは透子の方だ。
(な、なんで私の好きな色?)
そこに深い意味などないのかもしれない。色に迷ったから、隣にいた透子に意見を仰いだだけ。そうであっても、彼の選択に特別な理由を見出したくなってしまう。透子は逸る鼓動をそのままに、西岡の背を追いかけた。
西岡がそう尋ねてきたのは、食後のコーヒーを飲み終えた頃だった。
パフェは食べ終えたので、この商業施設に来た目的はすでに果たしたと言えるが、それを言ってしまえばこの幸せなひと時はたちまち終わりを迎えてしまうだろう。
それに、行きたいところがないわけではない。自分の買い物に西岡を付き合わせることへ罪悪感を覚えながらも、透子は頷いた。
「ここに行ってもいいですか?お鍋、見たくて」
スマートフォンの画面に表示させた、キッチン雑貨を扱う店の情報を西岡へ見せる。
かねてよりボーナスが出たら買おうと思っていたホーロー鍋の下見をしたかった。すると、西岡もグラスを買うと言うので、二人は真っ直ぐその店へと向かった。
先ずは透子が目を付けていた、有名な海外製のホーロー鍋の売り場へと向かう。今日買うわけではないが、ホーロー鍋は重量があるため実際に手に取って扱いやすいサイズを確認したかった。
何度か持ち上げて眺め回し、自分の手にしっくりくるサイズを確かめると、それをそっと棚に戻した。
「買わないの?」
「今日は見るだけって決めてたんで」
ボーナス云々は雇い主の前では言い辛い。透子は苦笑いで誤魔化すと、彼を促して今度はグラス売り場へと足を運ぶ。
「こういうのってどれがいいと思う?」
多種多様なグラスが並ぶ中、そう尋ねられた透子が選んだのは、どこの家にもあるような背の低いタンブラー。
グラデーションのように下にいくにつれて色が濃くなるよう美しく彩色されているものだ。色が十種類あり、どれを選んでも食卓が華やぎそうである。
その中の一つを手に取り、収まり具合を見た西岡は満足気に頷いた。
「うん、いいね。透子は何色好き?」
「……黄色ですかね?」
熟慮することなく軽く答えると、その言葉を受けた西岡が、黄色いグラスと濃紺のグラスの二つを手に会計へと向かった。
驚いたのは透子の方だ。
(な、なんで私の好きな色?)
そこに深い意味などないのかもしれない。色に迷ったから、隣にいた透子に意見を仰いだだけ。そうであっても、彼の選択に特別な理由を見出したくなってしまう。透子は逸る鼓動をそのままに、西岡の背を追いかけた。