恋はひと匙の魔法から
 翌日の夕方。
 水族館へと出かけた後、西岡に見送られて自分のアパートへ帰ると、ポストに一通の封筒が入っていた。
 裏を返して見ると差出人の箇所には、夕貴と雅人の名前が連名で記載されている。中身を見ずとも、三ヶ月後に控えた彼らの結婚式の招待状であることが分かった。
 部屋に戻ってベッドの上で封を切り、中の冊子を読みながら脳裏に思い浮かぶのは夕貴の幸せに満ち溢れた笑顔。
 憧れていた式場の予約が取れたと言っていたのは一年前だ。ようやくだなぁ、と本人でもないのに感慨深くなってくる。
 夕貴へ「招待状届いたよ!」とメッセージを送ると、返信代わりに何故か電話がかかってきた。

「もしもし?招待状ありがとう。ちゃん届いたよー。お返事は後で出しとくね」
『ありがとー。お手数だけどよろしくお願いします』
「はーい」
『で、どうなの?最近は』
「……何が?」
『西岡さんだよ、西岡さん!何が?じゃないって!』

 興奮した様子で捲し立てる夕貴の大声が届いて、透子は思わずスマートフォンを耳元から遠ざけた。
 わざわざ電話をかけてきた理由はそれか、と透子は納得して苦笑いを浮かべる。西岡と付き合うことになったとメッセージで報告はしていたが、夕貴は近況が気になって仕方ないらしい。

「今日、水族館行ってきたよ。イルカショー見てきたんだけど、結構良かったよ」
『いいねぇ〜。イルカより透子の方が可愛いよって?』
「……ち、違うから、そんなこと」
『その反応はマジで言われたなー。ラブラブですこと』

 実際はペンギンを見ていた時に冗談混じりで言われたのだが、訂正するのも憚られる。
 透子が言葉を濁すも、電話口からはケラケラと揶揄うような笑い声が聞こえるだけだった。

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