恋はひと匙の魔法から
ビルのエントランスに既に到着していたタクシーへ乗り込み、運転手へ行き先を告げる。抑揚のない返事とほぼ同じくして車窓から見える景色が動き出したことを確認した透子は、隣へ座る西岡へ声をかけた。
「来週ですが、可能なものはオンラインでの対応に調整しました。大阪のワークスペースも手配済みです。ただ、どうしても再来週に皺寄せがいってしまって……」
「うん、大丈夫。悪いな、調整してもらって」
「いえ……伊勢福さんの予定をもう少しまとめられたらよかったんですけど……」
顔も知らない担当者の、こちらの都合を軽視したメールの文面を再度思い出し、不貞腐れたような声音になる。すると、隣の西岡がクスリと笑い声を漏らした。
「もしかして、イラついてたのってそれが原因?」
言い当てられた透子の肩がビクッと揺れる。
確かに少しだけイラッとしていたのは事実だが、指摘されるほど分かりやすく不機嫌を撒き散らしてはいない、はずだった。
「……そんなにイラついて見えてました?」
恐る恐る彼を窺い見る。
すると西岡は柔らかく目を細めて、透子の眉間をクリクリと人差し指で押した。
二人きりとはいえ、今はまだ業務時間。社長と秘書という間柄にしては些か近い距離感に、透子はそわそわと瞳を彷徨わせた。
「珍しくここに皺が寄ってたから」
「えっと、それはなんというか。イラついてたってほどじゃないんですけど……伊勢福の担当の方がちょっと……。自分のとこの重役に阿りすぎて、こっちの都合お構いなしだったのが、ちょっとだけモヤモヤしたといいますか……」
「まあ、確かに見くびられてるとは思ったけど。そっか、なるほどね」
「来週ですが、可能なものはオンラインでの対応に調整しました。大阪のワークスペースも手配済みです。ただ、どうしても再来週に皺寄せがいってしまって……」
「うん、大丈夫。悪いな、調整してもらって」
「いえ……伊勢福さんの予定をもう少しまとめられたらよかったんですけど……」
顔も知らない担当者の、こちらの都合を軽視したメールの文面を再度思い出し、不貞腐れたような声音になる。すると、隣の西岡がクスリと笑い声を漏らした。
「もしかして、イラついてたのってそれが原因?」
言い当てられた透子の肩がビクッと揺れる。
確かに少しだけイラッとしていたのは事実だが、指摘されるほど分かりやすく不機嫌を撒き散らしてはいない、はずだった。
「……そんなにイラついて見えてました?」
恐る恐る彼を窺い見る。
すると西岡は柔らかく目を細めて、透子の眉間をクリクリと人差し指で押した。
二人きりとはいえ、今はまだ業務時間。社長と秘書という間柄にしては些か近い距離感に、透子はそわそわと瞳を彷徨わせた。
「珍しくここに皺が寄ってたから」
「えっと、それはなんというか。イラついてたってほどじゃないんですけど……伊勢福の担当の方がちょっと……。自分のとこの重役に阿りすぎて、こっちの都合お構いなしだったのが、ちょっとだけモヤモヤしたといいますか……」
「まあ、確かに見くびられてるとは思ったけど。そっか、なるほどね」