恋はひと匙の魔法から
店員が去った後、水卜はニヤニヤと笑いながら片肘を突いて透子を見据えている。
「で?」
「いや、あの……西岡さんとは、そういうのじゃ……」
もうすぐ振られます、とはよもや言える訳もなく、透子はボソボソと歯切れ悪く誤魔化した。その反応を見た水卜は眉間に皺を寄せ、怪訝そうに目を細める。
「そうなの?喧嘩中じゃなくて?」
「……というか、なんでそういう話になってるんですか?」
「いや、だって毎日おんなじ弁当食ってるし、最近仲良いし。絶対付き合ってるって噂だよ、君たち」
透子は愕然とした。
誰からも何も言われなかったため、てっきり気付かれていないと思っていたが、それは浅はかな考えだったらしい。そして噂の発信源もなんとなく想像がつく。
「……もしかして経企の皆さんですか?その噂って」
「大元はそうかな。それで、鬼のいぬ間に透子ちゃんの尋問会やるって言うから、俺も参加しようと思ってたんだけどね……」
「ああ、なるほど……」
ようやくこの謎のサシ飲みの意図と、経営企画室の女性陣からの密命の意味が理解でき、透子は脱力気味に頷いた。尋問会なる不穏な単語は、この際聞き流すことにする。
哀れにも失恋をした透子を慰めようとしてくれたのだろう。
何も知らないはずの周囲にまで気遣われていた自分がいよいよ情けなくなり、透子は俯く。
その時、「生中二つでーす!」と陰気な空気を吹き飛ばす溌剌とした声と共に、ドンと机にビールジョッキが二つ置かれた。
とりあえず飲もうと、どちらからともなく目配せし合い、ジョッキを控えめに打ち鳴らす。一口だけ含んだビールを喉に通すと、いつもより苦味が舌に残った。
「で?」
「いや、あの……西岡さんとは、そういうのじゃ……」
もうすぐ振られます、とはよもや言える訳もなく、透子はボソボソと歯切れ悪く誤魔化した。その反応を見た水卜は眉間に皺を寄せ、怪訝そうに目を細める。
「そうなの?喧嘩中じゃなくて?」
「……というか、なんでそういう話になってるんですか?」
「いや、だって毎日おんなじ弁当食ってるし、最近仲良いし。絶対付き合ってるって噂だよ、君たち」
透子は愕然とした。
誰からも何も言われなかったため、てっきり気付かれていないと思っていたが、それは浅はかな考えだったらしい。そして噂の発信源もなんとなく想像がつく。
「……もしかして経企の皆さんですか?その噂って」
「大元はそうかな。それで、鬼のいぬ間に透子ちゃんの尋問会やるって言うから、俺も参加しようと思ってたんだけどね……」
「ああ、なるほど……」
ようやくこの謎のサシ飲みの意図と、経営企画室の女性陣からの密命の意味が理解でき、透子は脱力気味に頷いた。尋問会なる不穏な単語は、この際聞き流すことにする。
哀れにも失恋をした透子を慰めようとしてくれたのだろう。
何も知らないはずの周囲にまで気遣われていた自分がいよいよ情けなくなり、透子は俯く。
その時、「生中二つでーす!」と陰気な空気を吹き飛ばす溌剌とした声と共に、ドンと机にビールジョッキが二つ置かれた。
とりあえず飲もうと、どちらからともなく目配せし合い、ジョッキを控えめに打ち鳴らす。一口だけ含んだビールを喉に通すと、いつもより苦味が舌に残った。