恋はひと匙の魔法から
それは先週の土曜夜のこと。契約している会員制のスポーツジムから帰った遼太が、自宅の玄関扉に鍵を差し入れた時だった。
「ん?」
鍵を回すが手応えがない。下段にあるもう一つの錠にも差し込んでみるも結果は同じだった。
遼太は顔をしかめた。明らかにおかしい。流石に鍵をかけ忘れるほど自分はボケていないはずだ。
だが錠前が壊れた可能性も捨てきれず、警戒心をあらわにしながらドアノブに手を掛ける。
物音を立てないよう静かな動作で引いてみると扉は何の問題もなく開いた。そのことに、いよいよ遼太は表情を険しくさせた。
この家を訪れる可能性が一番高いのは透子だが、彼女は兄の店に手伝いに行っているし、そもそも合鍵を渡していない。
いずれ渡そうと目論んでいるが、今は時期尚早だと判断していた。
仮に合鍵を渡したとしよう。透子の場合、自分の好きな時に訪ねるのは迷惑だからと遠慮して一切合鍵を使わないか、もしくは不摂生な遼太を案じて料理だけを作り顔を見せることなく帰るか、そのどちらかのような気がする。どちらにせよ虚しすぎる。
付き合ってまだ日が浅いということもあるだろうが、職場での上下関係が板についている透子は遼太に対して未だに遜った態度を崩さない。
もう少し普段から甘えてくれても、ともどかしく思わないこともないが、徐々に距離を詰めていけばいいだけだ。むしろ今のちょっとしたことですぐに照れて赤くなる透子も可愛いので何も問題ない。
頬を紅潮させあたふたとしている彼女を脳裏に思い浮かべたところで、遼太はこの緊迫した状況を思い出した。生憎だがそれどころではない。
「ん?」
鍵を回すが手応えがない。下段にあるもう一つの錠にも差し込んでみるも結果は同じだった。
遼太は顔をしかめた。明らかにおかしい。流石に鍵をかけ忘れるほど自分はボケていないはずだ。
だが錠前が壊れた可能性も捨てきれず、警戒心をあらわにしながらドアノブに手を掛ける。
物音を立てないよう静かな動作で引いてみると扉は何の問題もなく開いた。そのことに、いよいよ遼太は表情を険しくさせた。
この家を訪れる可能性が一番高いのは透子だが、彼女は兄の店に手伝いに行っているし、そもそも合鍵を渡していない。
いずれ渡そうと目論んでいるが、今は時期尚早だと判断していた。
仮に合鍵を渡したとしよう。透子の場合、自分の好きな時に訪ねるのは迷惑だからと遠慮して一切合鍵を使わないか、もしくは不摂生な遼太を案じて料理だけを作り顔を見せることなく帰るか、そのどちらかのような気がする。どちらにせよ虚しすぎる。
付き合ってまだ日が浅いということもあるだろうが、職場での上下関係が板についている透子は遼太に対して未だに遜った態度を崩さない。
もう少し普段から甘えてくれても、ともどかしく思わないこともないが、徐々に距離を詰めていけばいいだけだ。むしろ今のちょっとしたことですぐに照れて赤くなる透子も可愛いので何も問題ない。
頬を紅潮させあたふたとしている彼女を脳裏に思い浮かべたところで、遼太はこの緊迫した状況を思い出した。生憎だがそれどころではない。