恋はひと匙の魔法から
(空き巣か……?)
だとしたら犯人は出て行った後だろうか。
万が一に備え、ポケットからスマートフォンを取り出し、電話アプリを起動して速やかに警察へ通報できるようダイヤルをセットする。
そして扉で体を隠すようにしながら、ゆっくりと慎重に扉を開けた。
わずかな隙間から顔を覗かせると、まず目に入ったのは玄関に揃えて置かれているモスグリーンの女性もののパンプス。今にも折れそうなほど細いヒールはかなり高い。透子のものではなかった。
それを見た瞬間、侵入者が空き巣という線は消えた。だが胸の動悸は収まらない。嫌な予感が頭をよぎるのを感じながら、遼太は肩を怒らせながら一思いに扉を開けた。
廊下に立ち尽くしていたその女の後ろ姿を見ても、遼太の心に驚きはなかった。まあ、そうだろうな。と納得すらした。
物音に反応して、侵入者――英美里がこちらを振り返り、遼太の姿を認めると複雑な表情を浮かべて視線を下げる。
「……どうやって入ってきたんだ」
自分でも驚くほど冷ややかな声が出た。
流石に知り合いを警察に突き出すほど非情ではないが、これは不法侵入だ。歓迎できるほど遼太はお人好しではない。
すると英美里は唇を突き出し、拗ねたようにこちらを一瞥する。
「合鍵。前にもらってたから」
「は?そんなの渡した覚えないぞ」
「最初に付き合ってた時。ちょうだいって言ったらくれたじゃない」
英美里とは、過去に二度別れている。初めに付き合っていたのは、フェリキタスを興す前のことだ。この家に越してきたのは六年前。その当時、まだ付き合っていた英美里とそんなやり取りをした記憶があるような、ないような――
(いや、返せよ)
忘れていた自分も相当迂闊だが、そもそも別れた時に返すのが礼儀ではないだろうか。しかもそのチャンスは二度もあったというのに。
心の中でそうツッコまずにはいられなかった。英美里を見据える目に冷淡さが増す。
だとしたら犯人は出て行った後だろうか。
万が一に備え、ポケットからスマートフォンを取り出し、電話アプリを起動して速やかに警察へ通報できるようダイヤルをセットする。
そして扉で体を隠すようにしながら、ゆっくりと慎重に扉を開けた。
わずかな隙間から顔を覗かせると、まず目に入ったのは玄関に揃えて置かれているモスグリーンの女性もののパンプス。今にも折れそうなほど細いヒールはかなり高い。透子のものではなかった。
それを見た瞬間、侵入者が空き巣という線は消えた。だが胸の動悸は収まらない。嫌な予感が頭をよぎるのを感じながら、遼太は肩を怒らせながら一思いに扉を開けた。
廊下に立ち尽くしていたその女の後ろ姿を見ても、遼太の心に驚きはなかった。まあ、そうだろうな。と納得すらした。
物音に反応して、侵入者――英美里がこちらを振り返り、遼太の姿を認めると複雑な表情を浮かべて視線を下げる。
「……どうやって入ってきたんだ」
自分でも驚くほど冷ややかな声が出た。
流石に知り合いを警察に突き出すほど非情ではないが、これは不法侵入だ。歓迎できるほど遼太はお人好しではない。
すると英美里は唇を突き出し、拗ねたようにこちらを一瞥する。
「合鍵。前にもらってたから」
「は?そんなの渡した覚えないぞ」
「最初に付き合ってた時。ちょうだいって言ったらくれたじゃない」
英美里とは、過去に二度別れている。初めに付き合っていたのは、フェリキタスを興す前のことだ。この家に越してきたのは六年前。その当時、まだ付き合っていた英美里とそんなやり取りをした記憶があるような、ないような――
(いや、返せよ)
忘れていた自分も相当迂闊だが、そもそも別れた時に返すのが礼儀ではないだろうか。しかもそのチャンスは二度もあったというのに。
心の中でそうツッコまずにはいられなかった。英美里を見据える目に冷淡さが増す。