やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 優しく庇護してくれたひとからの軽蔑の眼差しは、シドニーに罵られるより、堪えた。


 ◇◇◇


「取り敢えず、おふたりとも着替えをお願い致します。
 連絡しなくてはいけないことも、聞かせていただかなくてはいけないことも、話はそれからです。
 早く! 着替え!」


 寝間着姿の私と腰タオル姿のオルが余程腹に据えかねたのか、部屋に招き入れるなり、フィリップスさんに号令をかけられた。


 早く! と追い立てられてドレッシングルームに飛び込んだ。
 もう寝間着姿まで見られてしまった。
 今更だけど出来るだけ上品で……と思い、祖父から贈られたワンピースを着た。


 そんな私に比べて、オルはバスローブを羽織るだけだ。
 早くリビングに戻らなきゃと思い、髪を手早く一つ結びにする。
 メイクは簡単に、パウダーを軽くはたいて、薄く口紅を引く。


 フィリップスさんにオルがどこまで話すのか、分からない。
 パピーだと自己紹介はしていたから、魔法士であることは言うつもりなんだろう。
 10年後から来た話はするのかしら……



 パピーからシア、そしてオルシアナス。

 ずっとふたりだけで過ごしていたこの部屋に、ようやく外部の風が入ってきた。


 フィリップスさんという、現実の風が。
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