やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

11

 オルくん、とモニカが言った。
 確かに言った。

 この孤児院にオルシアナス・ヴィオンが居るの?
 慌てて、腰を浮かしかけて……


 自分が奥に座ったこと。
 外に出るにはモニカに理由を言わなくてはいけないこと。
 オルの名前を出せば、彼はもうモニカにとって特別な存在になってしまうこと。

 次々に頭に浮かんで。
 そしてやっとの思いで。
 直ぐにあのオルなのか、確認したいのを我慢する。



 モンドが丘の上の邸に向かって、軽快に馬車を走らせる。



「ジェリー、もうホームシックになっちゃったの?
 それとも、寮で苛められた?」


 心配を装った、少し嬉しそうな声のモニカに。


「気分が悪いの、着くまで黙っててくれる?」

 と、つっけんどんに答えてしまった。
 今まで一度も、私からそんな返しをされたことがないモニカの表情にしまったとも思うし、何でも言っていいとずっと馬鹿にしてたのね、とも思う。
 でも今は、表面上は取り繕うか。


「寮はすっごく楽しいの!
 心配してくれてありがとう!」


 私の心配等全然していない相手にお礼を言ったが、取り繕えなかったみたい。
 モニカは腹が立つのか、無言だった。

 そうよ、静かにしてて。
 私は今は考えなくてはいけないのだから。
 そっちに集中したいの!


『庇ってくれた時』とモニカは言った。
 8歳も上の女性を庇って怪我をした?
 それはまさしく、信者の行動だ。
 そのオルくんは、私のオルだと思いたくなかった。

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