やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「先手を打てていると思っても、慢心はしないでいましょう」

 侯爵には黒魔法士がついている。
 これはオルだって知らなかった。
 用心しなくては、この先はどうなるか分からない。
 経過が変われば結果は変わるのだから。



 モンドが迎えに来てくれた。
 何度も往復させて申し訳ないな、と思っていたら、二頭立て馬車で両親が乗っていた。
 ふたりを列車にのせるまで、責任を持って見送ってくれるらしい。
 父にオルについてお礼を言うのは戻ってからにした。
 母が小さなクララに微笑んだ。


「駅の女子トイレは気を付けなくてはいけないの。
 クララちゃんをひとりでは行かせられないでしょ?」


 馬車に乗る前に、サイモンが私に13年後についてもうひとつだけ聞きたいことがある、と小声で言った。
 彼には時戻しのことを誰かに話したら、魔法士の呪いが3代に渡って降りかかる、と脅している。
 後日でいいから、と懇願するようにサイモンに言われた。 


 馬車に乗った彼は、また泣きそうな顔をしていた。


「キャンベル、恩に着る。
 ありがとう」
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