虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで

四章

(シャルルside)



一方、伯爵家では──


グラスが割れる音が部屋に鳴り響いた。
侍女の耳障りな悲鳴が聞こえて、さらに苛立ちが増していく。


「さっさと片付けておきなさいよ!グズ、使えないわねっ」

「ひっ……!」


カトリーナが出て行ってからというもの、使えない侍女ばかりでシャルルの怒りは頂点に達していた。


「これを今日までに仕上げろって言ったでしょう!?どうしてこんな簡単なことができないのよっ!」

「で、ですが屋敷の仕事をしながらなんて無理ですっ!時間がありませ……」

「口答えをしないでっ!」

「きゃっ……!」


シャルルは思いきり手を振り上げて侍女の顔を叩いた。
床に突っ伏した後に両手で顔を覆い、涙する侍女を見ても怒りは収まらない。
仕事ができないことが悪いのに泣いてばかりで役に立たないなんて救いようがないではないか。
仕舞いには「もう無理です」と言って、一週間も経たないうちにサシャバル伯爵邸をやめていってしまう。
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