【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
「それに、もうあんな思いをさせたくはないんだ」
「クラレンス殿下……」
思い出すのはサシャバル伯爵夫人とシャルルの顔。
何一つ変わらないあの二人を見て、カトリーナは自分を抱きしめるようにして腕を回した。
(……あんな場所に戻りたくない)
ナルティスナ邸で暮らしはじめてから強くそう思うようになる。
カトリーナの様子を見てか、クラレンスは静かに口を開いた。
「先程、父上と母上に相談してカトリーナをサシャバル伯爵家から籍を抜くように話してきた」
「……籍?」
「カトリーナは今、サシャバル伯爵家の娘として登録されている」
「え……?」
「まさか、それすらも知らなかったのか?」
クラレンスの言葉にカトリーナは唖然としていた。
カトリーナはただシャルルの身代わりとしてナルティスナ領にきたと思っていたからだ。
「……俺は最初にカトリーナと出会った時に、カトリーナをシャルル・サシャバルだと勘違いしていた。あの時は噂に振り回されてカトリーナにひどいことを言ってすまなかった」
「いえ、私は……」
「己の未熟さを恥ずかしく思う。それからあの後、カトリーナのことを詳しく調べさせてもらった」
「はい」
「そして色々と知ったのだ。カトリーナの境遇を……」