【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
ここにき来てからは、カトリーナがわからないことばかり起こる。
このような対処法は本には書いていなかった。
ニナは涙を拭いながらカトリーナの手を包み込むようにして掴んだ。


「今は働かなくてもいいのです。元気になるために食べましょう」

「……?私は元気ですが」

「いいえ、栄養も休息も必要です。まずはお名前を教えていただけますか?」

「…………!」


カトリーナはそう聞いて口篭る。
『余計なことを言ったら、どうなるかわかるでしょう?』
この一カ月の間、何度も言われた言葉だ。

カトリーナは伯爵達から詳しい事情を何も説明されていない。
シャルルの代わりにここにきたのだから、カトリーナとは名乗ってはいけないのかもしれない。
サシャバル伯爵家の娘として育っていないことがバレてしまったら……そう考えているとニナがカトリーナの力のこもった手を包み込むように握る。


「……っ」

「あなたがシャルル様でないことは、わたし達にはわかってますよ」


ニナの言葉にカトリーナの心臓が跳ねた。
『帰ってきても、お前の居場所はもうないんだから』
サシャバル伯爵夫人とシャルルの声が聞こえたような気がした。

(ここから追い出されてしまえば、私は……どこにいけばいいの?)
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