【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
今まで考えないようにしていた。
考えれば辛くなるし、生き延びるためには仕方ないのだと自分に言い聞かせていたが、こうして目の当たりにしてしまえば忘れていた感情が湧き起こってくる。
思い出すほどに身を引き裂くような痛みがカトリーナを襲う。
『あの女と娘、あの男を殺して……!お願い、カトリーナ』
耳元で母がそう囁いたような気がした。
「…………」
「カトリーナ様?」
「申し訳ございません。大丈夫です」
「無理だけはしないでくださいね」
ニナの言葉にカトリーナは静かに頷いた。
今は十分すぎる食事も、カトリーナにもったいないくらいの綺麗な部屋を与えられている。
今は皆の役に立ちたい、喜んで欲しいと心から思い動いている。
また吹雪の間は邸で静かに過ごす。
温かい紅茶を飲みながら皆で話をゆったりとしたり、静かに本を読んだり、カトリーナは今まで経験したことのない穏やかな時間を過ごしていた。
カトリーナはナルティスナ邸ではじめての居場所ができたような気がしていた。
ニナもゴーンもトーマスも大好きだったが、カトリーナの特別はクラレンスにある。
クラレンスは暇になればカトリーナの側でくつろいだり昼寝をするようになる。
はじめはどうすればいいのかわからなかったし、何故わざわざカトリーナの側で休もうとするのか疑問だった。
しかし次第にクラレンスと共に過ごす時間が楽しくて大切だと思うようになっていく。
クラレンスといる時に自分がたくさん笑っていると気がついていた。