愛されていたとは知りませんでした。孤独なシンデレラは婚約破棄したはずの御曹司に秘密のベビーごと溺愛される

シンデレラは愛を知る

ぼんやりと目を開けるとカーテンの隙間から日が差し込んでいた。

嫌な予感がして瞬時に覚醒する。ベッドサイドの時計を確認すると九時を指しており、花蓮は「うそ」と飛び上がった。
一緒に寝ていたはずの昴はいない。

「あ、歩那……」

幸い日曜日の為、仕事も保育園もない。
しかし朝食などの世話をしなくては。

ベッドから降りようとすると下腹部に鈍い痛みが走りうずくまる。
腰がひどく重い。まるでひどい生理の時のようだ。

裸だったため服をさがそうと体をうごかすと、全身が筋肉痛なことに気が付いた。

「うそでしょ」

昨日の昼間に二回。
昴が「もっと」と三回目を再開しようとしたところで歩那の昼寝タイムが終わってしまい、彼は消化不良となった。

家事と育児をこなし、夜にもう一度押し倒された花蓮は朝まで離してもらえなかった。
たくさん愛してほしいといったが、これほどまでに持久戦になるとは思わなかったというのが本音だ。

悪い気はしないが、体力がもたない。

がくがくとする膝に活をいれて着替えようとしていたところで、寝室のドアが開いた。

「花蓮、起きてたんだ。おはよう」

昴は髪をなで、おでこでリップ音を鳴らす。

「おはようございます。すみません、わたし寝坊を……」

「まだ寝不足でしょ。寝てていいよ。歩那は朝ごはん食べて今テレビみて遊んでるし。ママは疲れてねんねしてるよって言ったら理解したようだったよ」

寂しい思いをさせていないか心配だったが、昴が居れば泣かないことに驚いた。

「朝まで無理させちゃったからね」

申し訳ないと言うより、むしろ満足げに言われて肩眉を顰める。

「喜んでませんか?」

「そりゃあね。長年の願いが叶ったんだよ? 嬉しいにきまってる。でもまだ足りないくらいだけどね」

意識を飛ばすほど続けたというのに、まだまだ元気な昴にすこし呆れる。
複雑な気持ちで見返すと、微笑んだ昴は花蓮の唇をぺろりと舐める。

「今夜も花蓮を愛したいよ」

低い声が鼓膜に吹き込まれ、昨夜の快感を思い出しぞくりとする。

「し、仕事に影響がでるのはちょっと……」

曖昧な返事をすると昴は「了解、影響でないように努力するね」とカラカラと笑いながら部屋を出て行った。

(嬉しそう)

あんなに無邪気な一面もあったなんて。

機嫌をよくさせているのが自分なのかと思うと頬がゆるむ。ついニヤついてしまう顔を叩き引き締める。
寝ていていいと言われたがそんなわけにもいかず、身支度を整えるためにシャワーへと急いだ。
< 113 / 129 >

この作品をシェア

pagetop