元皇女なのはヒミツです!

 先生は満面の笑みで、

「ありがとう、リナ君! いやぁ~、君が引き受けてくれて本当に良かったよ。では、早速来週から頼むね」

 はぁ……もうこれからは先生の爽やかな笑顔も素直に受け取れないわね。

「分かりました。私も新しい仕事を探していましたし、紹介してくださってありがとうございます。――それで、そのご令嬢はどんな方なのですか?」

「あぁ、まぁ会えば分かるよ……」と、先生は苦笑いした。

 これは相当に面倒な子なのね。グレースみたいなのだったら嫌だなぁ。

「名前はアメリア嬢。年は10歳で、シェフィールド公爵家の一人娘さ」

 その名前を聞いて思わずパッと目を見開いた。

 ――小さなお姫様だわ!

 アメリア・シェフィールド公爵令嬢もフレデリック様の手紙によく登場している人物だった。
 シェフィールド公爵は現国王の王弟なので公爵令嬢はフレデリック様の従妹に当たるのよね。彼は公爵令嬢のことを「小さなお姫様」って呼んでいて、実の妹のように可愛がっているって聞いているわ。

 手紙には「ちょっと我儘だけど、とっても愛らしい小さなお姫様」って書いていたのだけど、家庭教師を何人も辞めさせる子が、ちょっと……?

 嫌な予感がして、背筋が寒くなった。

 でも、一度引き受けた仕事は責任を持って最後までやりとげないといけないわね。紹介してくださったアルフィー先生の顔を潰さないためにも、公爵令嬢がどんな子でも負けないで完遂させるわ!

< 111 / 371 >

この作品をシェア

pagetop