若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンとショーンをさらったのは、この近隣で悪さをしているごろつき共だった。
 悪党は悪党だが、ジョンズワートたちからしてみれば小物。
 どのグループなのかも、アジトも、カレンを連れ込んだ場所も。すぐに割り出すことができた。
 カレンが公爵の妻だと知って、勢いだけで誘拐を実行したのだろう。
 場合によってはこちらも人数を用意し、奪還計画を立てるところだが……そんなもの、必要がない程度の相手だった。
 カレンの護衛を任されるほど腕の立つのチェストリーとアーティはもちろん、ジョンズワートも、ある程度の戦闘技術は身につけている。
 乗り込むのは、この三人で十分だ。
 





「失礼する」
「ああ!? なんだお前ら!」

 妻子をさらわれたジョンズワートは、すっかり頭に血がのぼっていた。
 カレンをさらった者たちのアジトに、正面から突っ込むぐらいには。
 ドアを蹴破って堂々と現れたジョンズワートを、多数の男が睨みつける。ざっと見た感じだが、この部屋にいるのは十数人ほどだろうか。
 廃業した宿屋をアジトにしているようで、中は広い。他の場所にも、悪党どもがいるはずだ。
 掃除などろくにされていないうえに、男臭い。
 男だらけのこんな汚い場所に妻子が囚われているのかと思うと、更に怒りが増した。

「カレンとショーンを、返してもらう」

 地を這うような低い声。すらりと抜かれる剣。
 長身で、品のある男が、剣を持って真顔で近づいてくる。
 殺される。そう思わせるだけの迫力があった。賊たちは怯んだが、そのうちの一人が「相手は三人だけだぞ!」と叫んだことにより、それぞれ臨戦態勢に。
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