若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンを抱きしめる腕に、力を込める。カレンは、抵抗せずジョンズワートを受け入れてくれた。
 そんな彼らを……自分の母と「ワートおじさん」が抱き合う姿を前にしたショーンは、不思議そうに二人を見つめていた。
 母親が、今日初めて会った男の腕の中で泣いているのだ。息子からすれば、謎の光景だろう。
 ショーンの視線に気が付いたジョンズワート。思わず、「カレン、この子は」と聞いてしまった。
 そこでようやくカレンはハッとして、今の状況を理解した。
 ジョンズワートとショーンが、再び出会ってしまった。
 ジョンズワートは既にショーンが自分の息子だと気が付いているし、カレンもそれを理解している。
 それでも、認めるわけにはいかず。

「この子は……」
「ショーン。ごめんな、ちょっとおじさんと一緒にきてくれるかな? お父さんに会いに行こう」
「お父さんに?」
「ああ」

 なんとなくこの後の展開が見えたアーティは、さっとショーンを抱き上げて部屋の外に出た。
 この子は3歳だから、どのくらい話の内容が理解できるのかわからないが。
 子供に聞かせるのは酷だろうと、そう判断したのだ。
 宿屋の一室だった場所には、気絶し、縛り上げられた悪党と、カレンとジョンズワートが残された。


「ちがう、違うんです。あの子はあなたの子ではないのです。私は不貞を働いて……。そう、他の男の子供を妊娠したから逃げたんです。本当です、信じてください。あなたの子では、ないのです」
「カレン、もう……」

 
 もう、そんな嘘をつかなくていい。もう、わかっている。
 カレンと身体を重ねたのは、初夜の一度きり。避妊はしなかった。
 あのとき妊娠したのだとすれば、ショーンの年齢を考えても計算が合う。
 だからもう、そんな風に泣きながら、嘘をつかなくてもいい。
 ジョンズワートはそう思っていたが、カレンは今も「違う」と繰り返している。
 涙を流すカレンと、自身の子であることを強く否定され続け、涙が出そうなジョンズワート。
 そんな状態になった頃、こつこつと足音が聞こえてきた。ジョンズワートは警戒態勢になったが、それはすぐに解かれた。
 現れたのが、チェストリーだったからだ。

「お嬢、もういいんですよ」
< 103 / 210 >

この作品をシェア

pagetop