若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「僕が、サラと?」
「違うのですか? だって、サラとキスだってして……」
「キス!?」

 カレンは二人がキスをする場面を目撃したが、それは誤解だったため、ジョンズワートにとっては、本当に覚えのないことで。
 あまりのことに、声が裏返っていた。

「キス? 僕がサラと? サラと?」

 動揺するあまり、「サラと?」と二回も確認した。
 カレンにキスしたいと思ったことは何度もあったが、サラに対してそんな風に思ったことはない。
 サラとは確かに仲がいいかもしれないが、恋愛感情などない。
 ジョンズワートは、サラには早くいい人を見つけて欲しいと思っているぐらいなのだ。
 その「いい人」というのは、もちろんジョンズワート自身ではない。

「は、はい……。私がまだ公爵邸にいたころ、二人がキスする場面を見てしまって」
「え、っと……? キス……? サラと……?」

 カレンの言葉に、ジョンズワートは思考を巡らせた。そんなことあったかな。疑わしい場面があっただろうか、と。
 しかし、なにも思い出せなかった。本当に、心の底から、覚えがないのである。

「ごめん、カレン。それらしいことはなにも思い出せない。思い出せないけど……きっと、誤解させてしまったんだよね。サラとはそんな関係じゃないよ。僕が好きなのも……キスを、したいと思うのも。きみだけだ。カレン」
「わた、し? でも、サラと懇意にしていると、ずっと前から噂されていて……」

 まだ10代だったカレンは、確かに聞いたのだ。ジョンズワートとサラが懇意にしていると。
 しかし、ジョンズワートは。

「その話は、早い段階で否定しているよ。……でも、完全には払拭できていなかったのかもしれないね。当時は、僕もそれどころじゃなかったから」
「あ……」
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