若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「僕は、ずっときみのことが好きだった。今、目の前にいる、カレン・アーネスト・デュライト。僕が、好きなのは……。幼いころから好きで、今も想い続けている相手は、きみ。死んだと言われても信じられなくて、ずっと探していた」
「ほんとう、なのですか? こんな私なんかを? ひどいことをして、あなたを傷つけたのに」
「本当じゃなかったら、傷を利用して無理やり結婚させるなんてことしないし、ここまで探しにも来ていないよ」
「……!」

 ジョンズワートがカレンに二度目の求婚をしたとき。
 彼は、幼い頃からずっと好きだった、きみのことが忘れられない、とはっきり伝えている。
 けれど、あの時点では、カレンにそれらの言葉も、気持ちも、届かなかった。
 カレンは、ジョンズワートが自分に気を遣ったのだとばかり思っていた。
 でも、今は。誘拐と死亡を偽装したというのに、再婚もせず、自分を探し続けていた、本当に、ここまで来てくれたという事実がある、今は。

「ワート、さま……!」

 もう枯れるほど泣いたはずなのに、カレンの瞳からはまた涙がこぼれ始める。
 ジョンズワートの気持ちが、ようやく、カレンに届いた。

「ワートさま、わたしも、ずっと、ずっと、あなたの、こと、が。でも、じゃまを、したくなくて。これ以上、しばっちゃだめだって、おもって。でも、妊娠、したかも、しれなくて。だから、死んだことに、して、にげ、て。これでワートさまを自由にできるって、そう、おもって」

 カレンは泣きじゃくりながらも必死に言葉を紡ぐ。
 ジョンズワートは、カレンに想いを届けてくれた。今度は、カレンの番だ。
 聞き取りづらいかもしれない。見るにたえない姿かもしれない。
 でも、それでも。カレンは話し続けた。何年分積もり重なったのかもわからない、自分の想いを。

「うん、うん……」

 ジョンズワートは、カレンをそっと抱き寄せて、彼女の言葉を聞き続ける。
 彼女が抱え続けたもの。苦しかったこと。逃げるために事件を偽装したこと。全部全部、ジョンズワートは受け止めた。
 そして、彼女の、一番根っこにある、本心も。

「わーと、さま。わたしは、あなたのことが、ずっと、すき、でした」
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