若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 30近くなった今も、チェストリーは近所でも有名な、超がつくほどの美形である。
 そんな男の様々な感情がこもった笑顔を受けて、カレンは再びしおしおとしてしまった。
 夫婦として暮らしていた頃は、周囲の人に怪しまれないよう、口調も呼び方も変えていた二人だが。
 主人と従者に戻った二人は、アーネスト家やデュライト家にいた頃のような接し方に切り替わっていた。

「あ、あー……。チェストリー。カレンのことを守り続けてくれてありがとう。今回も、きみが僕たちを引き合わせてくれたんだよね。きみには本当に感謝してもしきれな……」
「俺のことも労わってほしいなあ!?」
「もちろん、アーティにだって感謝して」
「旦那さまー、俺、ホーネージュに戻ったら長めの休暇が欲しいです」
「あっ、俺も俺も」

 なんとかこの場を収めようとするジョンズワート。従者二人に玉砕。
 主人に振り回され続けた従者たちは、休暇もだけど休暇を楽しむための予算も欲しい、せっかくならいい宿に泊まりたいなあ、公爵様の財力でなんとかしてくれないかなーなどと盛り上がっている。

「ああもう……わかった。チェストリー、アーティ。ホーネージュに戻ったらまとまった休暇を用意する。これまでの働きに対する報酬も。宿も見繕う。満喫してくるといい!」
「あ、ほんとですか? 言ってみるもんですね」
「な」

 チェストリーとアーティは、二人揃ってあははと笑う。それはそれは、愉快そうに。
 従者たちは、帰国後の休暇をもぎとった。
< 109 / 210 >

この作品をシェア

pagetop