若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 ショーンは活発な男の子で、今いるのはホーネージュでも有名な、アーネスト領雪まつりの会場。
 当然、かなり人が多い。
 だからカレンもジョンズワートも、ショーンが迷子にならないよう気を付けていた。
 それは観光客に紛れた護衛だって同じで。
 三人に……特にショーンになにかあれば、すぐに助けがくるはずだった。

 そろそろ違うものを見に行こうと、三人が移動を始めたときだった。
 道行く人にぶつかって、一瞬、ジョンズワートとショーンの手が離れてしまった。
 まだまだ小さなショーンは、あっという間に人混みにのまれてしまう。

「ショーン!」

 必死に手を伸ばすが、ショーンの方はといえば、気の向くままに違う方向へ進みだす。
 ジョンズワートも護衛もすぐに追いつくことはできず。
 ショーンは、一人でどこかへ消えてしまった。
 その後、皆で必死に探すがショーンは見つからない。
 少し経ったタイミングで、護衛がジョンズワートにあるものの存在を報告した。
 高低差を利用して作られた、雪でできた長い滑り台である。
 いくら人が多いとはいえ、カレンもジョンズワートも、複数名の護衛もいたのである。そんな中、こんなにもすっといなくなるのは難しいだろう。
 だが、この滑り台を見つけて、一人で滑り下りてしまったのなら。降りた先で駆けて行けば、そのまま姿を消すこともできる。
 先ほど滑り台の楽しさを存分に味わったショーンなら、これだけの高低差のものでも一人で乗ってしまうかもしれない。
 聞き込みをすれば、小さな男の子が一人で滑っていった、という証言を得ることもできた。
 ショーンは、滑り台を使って大人たちの目が届かない場所までおり、そのままどこかへ行ってしまったのだ。
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