若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンももちろんだが……ジョンズワートの心臓は、どっどっど、と嫌な音を立てていた。
 ショーンが、自分たちの元からいなくなった。
 ただ迷子に――それも十分に危険なことではあるが――なっただけかもしれない。
 しかし、ジョンズワートは二度にわたって家族を誘拐されている。……一度目は、偽装だったけれど。
 ジョンズワートは、今まで何度も大事な人を失いかけているのだ。
 今回も、もしかしたら誘拐されたのではないかと。
 ジョンズワートの中で、どんどん不安が大きくなっていく。

 なにも公爵の看板をぶら下げて遊んでいたわけではないが、自分たちが公爵家の人間だと、わかる人にはわかるかもしれない。
 義理の両親にもらった防寒具も、見定めるつもりで見れば簡単にわかる上等なもので。正体を知らなくとも、ショーンがお坊ちゃんであることは理解できるだろう。
 あの幼子を誘拐の対象とする理由は、十分にある。

 冬だというのに、ジョンズワートからは嫌な汗が流れる。
 早く、ショーンを見つけなければ。
 ショーンが戻ってくるかもしれないから、カレンと護衛の一人には雪像がある場所に残ってもらい、ジョンズワートを含めた他の者はショーンの捜索にあたる。
 必死になって駆け回るが、やはりショーンは見つからない。
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